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病院看護医療情報Topicsまとめ(Health and Medical Information)

病院・看護・医療に関する話題の情報トピックスをメモってまとめてる備忘録的なブログです。掲載している情報は、必ずご自身で内容をご確認ください。記載が不正確であったことにより生じたいかなる損害に関しても、私は責任を負いかねます。

医療崩壊の危機は近い?「二次救急医療の最前線で何が起こっているか」を拝聴して (日本医療法人協会会長:加納総合病院院長:加納先生)

先日行われました加納先生の講演を拝聴してのまとめになります。
二次救急医療を苦労して維持している状況の話が聞けて、非常に参考になりましたので、こちらにも掲載させていただきます。
二次救急医療の最前線で何が起こっているか、平成28年度診療報酬改定もあり何がどう変わったか、どういう形で、二次救急が展開しているのかを語りたいとのことで、加納総合病院の加納院長が公演されました。

 

「二次救急医療の最前線で何が起こっているか」を拝聴して
(日本医療法人協会会長:加納総合病院院長:加納先生)

加納総合病院とは?

加納総合病院を中心にハートフルグループとして展開されており、ケアミックスでの運営で、一般:151床(HCU:10、SCU:3)、回復期96床、療養:53床。 機能分化といわれていますが、地域には地域に密着した病院があるのが望ましく、患者が次から次へと病院を探さないといけないのはおかしいじゃないかとの思いで、いろいろやっているとのことでした。

患者が一度病院に入ったら、同じ病院で一貫してやっていくのが、本当に地域住民のためになると考えてケアミックスとしており、地域ごとに、同様の病院があれば便利ではないかと考えているとのことでした。

 

日本の救急医療を担っている主体は、実際はどこか?

さて、二次救急ですが、そもそも日本の救急医療を担っている主体はどこなのか?

・公的病院:2割、病床数:3割、救急搬送:4割
・民間病院:8割、病床数:7割、救急搬送:6割

「2,3,4、8,7,6の法則として知っておいて欲しい」とのことを強調されてました。実は日本の救急の6割が民間で、民間病院が日本の救急医療の中心になっている現状があるようです。日本の病院は8500を切っているのですが、8割が民間病院で、そのうち9割が医療法人。日本の病院は民間が8割を覚えておいて欲しいとのことでした。

日本には160万床ぐらいのベッドがあるのですが、その7割が民間で、年間540万件程度の救急搬送があり、そのうち民間が6割で、公的病院が4割。日本の病院の急性期は、実は民間病院の方の役割が大きい状態にあると言えるとのことです。公的病院は2割の病院数で、4割の救急をみているという点から、公的病院も頑張って役割を担っていると勘違いされやすいのですが、民間病院は急性期も慢性期も精神科も全てを支えており、いろいろなタイプの病床があるので、4:6ぐらいの急性期の比率となり、実は救急受け入れのトータル数は民間の方が多く、民間病院は、急性期以外にもいろいろ役割を担っているので、割合的で見た時に公的病院も頑張っているように見えているだけに過ぎないとのことでした。

 

県ごとの救急搬送受け入れ状況

県ごとの救急搬送の受け入れについて、公、民どちらが多いのかを見ていくと、大阪は70%以上民間。東京、千葉、埼玉、鹿児島、大阪は70%以上民間で、それらの県で日本の人口の3割となっており(ちなみに図より奈良は50%以上、京都も同じく50%以上が民間の状態)、民間が頑張っているエリアと、公的病院が頑張っているエリアとで色分けすると、21の県で、民間の方の救急受け入れが多い状態で、さらにその21の県で日本の総人口の2/3を占めている状況となっており、民間病院が頑張っているとのことでした。一方で、公的病院が優位のところは、主に人口密度が少ないところで、2極化している状況にあり、民間病院の救急受け入れが50%を超える県の合計で、日本の人口の実に65.4%となっており、実は日本の救急は、受け入れている人口的には民間が支えている状態となっているとのことでした。

しかし、公的病院が70%を超えている県も数多くあり、それは、今の診療報酬の仕組みでは、人口密度の少ないところでは、税金を投入しないとやっていけないからで、そういった地域では、民間では救急ができない状態となっているとのことでした。さらに愛知県は人口が多いのに、公的病院が50%となっているのはなぜなのかですが、それはトヨタの関連会社の税収入が、愛知県の自治体に入っているためで、例えば小牧病院が大変立派になったのですが、一方で、その周辺の民間病院が救急をやめていった状況があります。公的病院は税金を投入していろんな形で展開できるので、民間病院では立ち向かえず、診療報酬だけでは対抗していけません。愛知県ではそれが起こったというのが現状だということでした。そして、その愛知県を抜くと、公的病院が頑張っているエリアというのは、実は日本の28.7%の人口しかカバーしていない状況にあります。しかし一方で富山のように6%が民間で、残りは公的病院が担っているという県もあります。 逆に大阪は74%が民間で、民間が支えているエリアは民間病院を大事にして欲しいという状態。そもそも民間がダメになったら?公的に置き換えられるの?人口多いのに?公的病院だけでやっていけるの?という状況にあるとのことでした。

 

高齢者が増えていく状況での救急医療

今後、高齢者が増える可能性が高い都道府県としては、東京、大阪、神奈川、埼玉、愛知、千葉、北海道、兵庫、福岡で、2025年までに65歳以上が人口増加率の60%を占め、主に民間病院が頑張っているエリアが、これから高齢者が増えるところとなり、愛知県以外は民間病院が救急を支えており、二次救急を含め民間病院が支えている状況があるとのことでした。

今後、地域包括ケアシステムで医療・介護をどう関連付けるか?一番大事なのは、何か起こった時、どう急変時に対応してもらえるかが大で、いかに急変時に対応できるか、つまり救急搬送が大事ということです。そんな状況の中、実は三次救急が大変なことになっていて、高齢者がベッドを埋めてしまうようです。高齢者のターミナルをみたりもしており、本来の三次救急は二次救急が受け入れられない救急車を受け入れる最後の砦だったはずなのに、被災者や脳卒中の妊婦などの受け入れ先となるはずが、三次救急に高齢者が流れているの現状があるのが非常に問題となっているとのことでした。

今後、二次救急が地域包括ケアシステムを支える大事なポイントなのですが、では、実際に二次救急を行うにあたって、どれだけの費用が掛かっているのか?一般病院と救急の違いはどこにあるのか?昼は一緒、問題は5時から次の日までが違います。そこにいかに人を配置するかが違っているとのことで、かかる費用は、

100-199床:年間 142,928,552円
200-299床:年間 185,975,577円
300床以上  :年間 292,397,167円
全体平均    :年間 187,554,988円

加納総合病院でも実際に1.8億円ぐらいかかっており、それだけの費用をかけないと、二次救急とういうのは維持できないとのことで、300床以上の病院だと、年間約3億円が余計にかかる状況です。これだけの費用をかけており、これを補う収入がないとできることではありません。患者がたくさん入ってこないと難しく、二次救急は本当に費用がかかるとのことでした。

独立行政法人福祉医療機構 | WAM」の資料から、病院の経常利益率をだして比較してみると、一般病床が50%を超えている病院を一般病院、精神科病床が80%を超えているのを精神科病院として、プロットすると、一般病院は1.5%しか利益がない状態で、慢性期(療養型)は6~7%を行ったり来たりしている。慢性期が下がらないのが羨ましいとのことでした。

また、年次の推移をみると、平成19年は利益0まで下がっており、それは診療報酬改定でマイナスが続いたためで、小泉首相の頃で医療費の削減が続いたためです。その頃は救急のたらいまわしで、地域医療崩壊となっていました。民間の急性期は利益0、マイナスなところが多かったのです。奈良県で妊婦が処置できずにたらいまわしということがあったのがその頃で、社会的に医療崩壊が起こっていました。それが民主党政権の頃になって少し回復しており、民主党と国民新党もいっしょに、たたかってくれて、H22年度は+0.19%、H24年度は+0.004%のプラス改定で復活したとのことでした。

しかし、H28年度は再び-1.31%のマイナス改定で、今のところ、H28年度の平均利益率は実感では0に近づくように思われ、どの病院も大変な状況と聞くとのことでした。H19年度の再来で医療崩壊が起こってくるかもしれません。まさにそういった状況にある一方で、慢性期や精神科は比較的に安定しています。しかし、すべての民間が慢性期に行ってしまうと、大都市の救急体制は崩壊してしまうとのことでした。

 

二次救急に関る診療報酬改定の歴史

二次急に関る診療報酬改定の歴史をみてみると、

麦谷課長:コを追加して対象が増えた
 ⇒その他を作ってくれて、二次救急でも加算がとれるようになった
佐藤課長:600→800点に増えた
鈴木課長:2次救急の点数をつけて欲しいとしお願いした
 ⇒夜間休日救急搬送医学管理料200点を創設
 ⇒2次救急の受け入れに対する評価は初
宇都宮課長:その他をなくせということになった。0にすると言われてしまった
 ⇒救急搬送医学管理料を1と2に分離され、1→800、2→400となった
宮嵜課長:二次救急を熱心に考えてくれた。
 ⇒1→900、2→300点となった。また、夜間は平日の深夜のみだったのを、夜間は5時からOkにしてくれた
 ⇒時間外に1台当たり、200→600点にしてくれた

宮嵜課長の改定で、救急の年間の収益が2000万ぐらい増えたのではないかと思っているとのことで喜んだのですが、しかし、実は裏があったようです。DPCの機能評価係数の2の中に、重症度係数があるのですが、救急入院2日目までの包括範囲は除外するとなってしまいました。救急係数は別で評価されているので、そこは差っ引くとなってしまったようです。その結果、加納病院では0となっており、結果、平均値より係数がマイナスとなってしまい、DPCでマイナスなので、救急受け入れ部分の増収がマイナスと相殺されたようになってしまった。次回の診療報酬改定で何とかして欲しいと思っているとのことでした。

 

救急医療を担っている公的病院が黒字のからくり

ここでまた、救急を行っている公的病院のことですが、公的病院は黒字と言っているが、実はそこにはマジックがあるとのことでした。実は、黒字になるのは繰入金があるからで、例えば、大阪府立病院機構は、経常損益で黒字となっているのですが、そこには、収入として、
「繰入金:10,311,000,000」
があり、それを抜くと、実は80億円程度の赤字状態であるとのことでした。

 

以上のように、二次救急体制は実は民間が重きを担っており、しかしその維持には多額のコストが必要で、どこの病院も、そこに非常に苦労しており、この状態を何とか考えていかないといけないとのことでした。

まさに当院も実感として感じている状況をお話しいただき、非常に理解できました。なんとかしないといけないの思いで頑張っているのですが、難しい状況です。
税収が増えない状況での、爆発的な高齢者人口の増加により、予算が無いというのもよくわかるのですが、国としてよくよく考えたうえで、医療費を考えて欲しいと思います。削減により多数の民間病院が成り立たなくなってしまっての、医療崩壊は危険です。国民の皆様も含め、いざという時の国民皆保険制度による医療とは、どこまでの医療がそうなのか、皆で考えていかないといけない時代になってきているのかもしれません。

日本の国民皆保険は非常に良い制度です。なんとか堅持するためにも、税収に占める医療費の割合というものを、今一度考えていくことが大切だと私は思います。