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病院看護医療情報Topicsまとめ(Health and Medical Information)

病院・看護・医療に関する話題の情報トピックスをメモってまとめてる備忘録的なブログです。掲載している情報は、必ずご自身で内容をご確認ください。記載が不正確であったことにより生じたいかなる損害に関しても、私は責任を負いかねます。

病院・診療所はカルテをいつまで保管すべきなのか?保存期間は何年?5年?

カルテ(診療録)の保存期間は何年とすべきなのでしょう?
医療従事者であれば「たぶん5年」と答える方が多いと思います。
ですが、その根拠は?また、5年とは具体的にはいつの時点からの5年なの?と、詳しい説明を求めると、なかなか答えられない。難しいところです。
今回は、この診療録保管期限について、詳細にみていくことにしましょう。

病院・診療所はカルテ(診療録)をいつまで保管すべきなのか?

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Q:そもそも、診療録を保存しなければいけないという法律や規則はどこにあるのでしょうか?

A:①医師法②医療法③医療法施行規則④保健医療機関及び保健医療療養担当規則⑤保健婦助産婦看護婦法⑥保健婦助産婦看護婦施行規則

QAのように、上記あたりが、診療録の保存期間について定めた法律や施行規則になりそうです。これらについて、その定められた内容から、保存期間を何年とすべきなのかを読み取ってみたいと思います。

①医師法

医師法では、

第二十四条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO201.html

とされており、5年間の保存を義務付けられています。ですが、ここには、いつの時点からの5年なのかの記載がありません。遅滞なく記載してからの5年なのでしょうか?他の法もみてみましょう。

②医療法

医療法では、第二十一条にて「記録を備えて置かなければならない」とされていますが、期間については記載がありません。
引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO205.html

さらにその施行規則もみてみましょう。

③医療法施行規則

医療法施行規則では、

第二十条 十 診療に関する諸記録は、過去二年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院患者及び外来患者の数を明らかにする帳簿並びに入院診療計画書とする。

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23F03601000050.html

とされており、過去2年間となっています。しかし、ここで言う「過去」とは、どの時点からの過去なのかの明示がありません。

④保健医療機関及び保健医療療養担当規則

保健医療機関及び保健医療療養担当規則では、

第九条 保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32F03601000015.html

とされており、診療録で5年間。診療諸記録で3年間となっています。さらに、ここではいつの時点からの保存なのかについての記載があります。「完結の日」です。しかし、完結の日とは、具体的にはいつのことなのでしょう?またしても明示されていません。

⑤保健婦助産婦看護婦法

保健婦助産婦看護婦法では、

第四十二条 助産師が分べんの介助をしたときは、助産に関する事項を遅滞なく助産録に記載しなければならない。
 前項の助産録であつて病院、診療所又は助産所に勤務する助産師が行つた助産に関するものは、その病院、診療所又は助産所の管理者において、その他の助産に関するものは、その助産師において、五年間これを保存しなければならない。 

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO203.html

とされており、ここでも5年間の保存とされております。しかし、ここでもいつからの5年なのかの明示がありません。

さらにその施行規則もみてみましょう。

⑥保健婦助産婦看護婦施行規則

保健婦助産婦看護婦施行規則(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26F03601000034.html)では、助産録に記載すべき内容についての記載はありますが、ここでも具体的にいつからの保存期間なのかの記載はありません。

 

以上のように、様々な法や施行規則を見てきましたが、保存期間については定められており、最長で5年間ということになっていました。しかし、具体的にいつからの保存期間なのかについての記載が無いようです。唯一記載のあったのは「完結の日」だけです。それでは、カルテの保管期間はいったい、いつから何年にすべきなのでしょう?

 

「完結の日」とは具体的にいつをさすと考えるべきか?

唯一記載のあった「完結の日」とは、具体的にいつをさすと考えるべきなのでしょう?厚生労働省の見解では、保険者が決めるとされているようです。過去に、下関市では厚生労働省に対して見解を確認したところ、下記のように回答され、「完結の日」=「使わなくなった日」と定めたようです。

厚生労働省に確認したところ、「現在、「完結の日」の起算日について定めがないので、保険者判断による。」との回答を得ました。よって下関市においては、「完結の日」は、その記録を「使わなくなった日」のことといたします。

引用:http://www.city.shimonoseki.lg.jp/www/contents/1370828194888/html/common/other/52202e39006.pdf

しかし、法律に具体的に示されていないことですから、実際に裁判になってみないと、これで良いのかどうか分からないというところでしょう。過去の裁判事例をみるに、最終診療日を完結の日とみるというのが一般的なようです。ですが、明示されていない以上、裁判にて必ずしもそうなるとは限りません。でも、期限を切らないと、データが溜まる一方なことですし、一般的には、最終診療日から5年といことで、良いということにしておきますか?

 

本当に「完結の日」は「最終診療日」として、そこから5年で良いの?

はてさて、とりあえずでは、最終診療日から5年間保管しておけば、一般的にはカバーできるという感じで良さそうということでよろしいでしょうか?そういうことにしましょうか?最終診療日が5年間よりも前のものであれば廃棄しても、法的に安全といえるのでしょうか?

いえいえ。実はそうとも言い切れません。民事による訴訟では、病院は「債務不履行」あるいは「不法行為」による賠償請求を受ける可能性が高いのですが、それらの時効は下記のようになっているのです。

債務不履行→債権成立から10年

民法第167条 1. 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

不法行為→損害及び加害者を知った時から3年、又は不法行為の時から20年

民法第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

医療関連法の保存期限は守っていても、民事で訴えられた際に、証拠となる診療記録がないことで不利となる可能性があるのです。これだけ長期となると、完結の日(最終診療日)から5年では、全くカバーできないということになります。昔と違い、近年は弁護士のすすめもあるのでしょうか?、重箱の隅をつつくように、長い年月が過ぎた後で、裁判を起こされてしまうことがあるようになりました。
そう考えると、診療録をはじめ診療諸記録についても、永年的に保管できるのであれば、保管しておいた方が、あとあと良いのかもしれません。電子的なデータとなっているのであれば、保管場所もそれほど取らないはずです。永続的な保管としておくことが、結局は病院を守ることになるのかもしれませんね。

 

以上が一般的な病院・診療所でのカルテ保存期間についてになりますが、さらに、健康診断業務も請け負っている施設の場合は、さらに別な注意も必要になります。

 

健康診断業務も請け負っている場合にはさらに別の注意点も!

健康診断業務も請け負っている施設の場合は、労働安全衛生法関連についても、関係してくることになりますから、さらに注意が必要になります。

⑦労働安全衛生規則

労働安全衛生規則では、

第五十一条 事業者は、第四十三条、第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断若しくは法第六十六条第四項 の規定による指示を受けて行つた健康診断(同条第五項 ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第四十三条等の健康診断」という。)又は法第六十六条の二 の自ら受けた健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを五年間保存しなければならない。

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47F04101000032.html

とあり、5年間保存となっています。一般的な診療録と同じ5年ということですね。

しかし、実は、5年ではすまないこともあります。

⑦じん肺法

じん肺法では、

第十七条 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、その行つたじん肺健康診断及び第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断に関する記録を作成しなければならない。
 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を七年間保存しなければならない。

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO030.html

とされています。なんと、じん肺健診を行っている場合は、7年間の保管が義務付けられています。エックス線写真についてもなので、より一層注意が必要です。

⑧電離放射線障害防止規則

 電離放射線障害防止規則では、

第五十七条 事業者は、第五十六条第一項又は第五十六条の二第一項の健康診断(法第六十六条第五項 ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。以下この条において同じ。)の結果に基づき、第五十六条第一項の健康診断(次条及び第五十九条において「電離放射線健康診断」という。)にあつては電離放射線健康診断個人票(様式第一号の二)を、第五十六条の二第一項の健康診断(次条及び第五十九条において「緊急時電離放射線健康診断」という。)にあつては緊急時電離放射線健康診断個人票(様式第一号の三)を作成し、これらを三十年間保存しなければならない。ただし、当該記録を五年間保存した後において、厚生労働大臣が指定する機関に引き渡すときは、この限りでない。

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47F04101000041.html

健康診断の個人票について、5年保存ののちに、指定機関への引き渡しを行うかあるいは、30年間の保存義務があることになっています。なんと30年ですよ。

⑨特定化学物質障害予防規則

特定化学物質障害予防規則では、

第四十条 事業者は、前条第一項から第三項までの健康診断(法第六十六条第五項 ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「特定化学物質健康診断」という。)の結果に基づき、特定化学物質健康診断個人票(様式第二号)を作成し、これを五年間保存しなければならない。
 事業者は、特定化学物質健康診断個人票のうち、特別管理物質を製造し、又は取り扱う業務(クロム酸等を取り扱う業務にあつては、クロム酸等を鉱石から製造する事業場においてクロム酸等を取り扱う業務に限る。)に常時従事し、又は従事した労働者に係る特定化学物質健康診断個人票については、これを三十年間保存するものとする。

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47F04101000039.html

とあり、こちらも30年間の保存が義務付けられています。

さらに、

⑩石綿障害予防規則

石綿障害予防規則では、

第四十一条 事業者は、前条各項の健康診断(法第六十六条第五項 ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「石綿健康診断」という。)の結果に基づき、石綿健康診断個人票(様式第二号)を作成し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該業務に従事しないこととなった日から四十年間保存しなければならない。

引用:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17F19001000021.html

とされており、個人票だけですが、なんと40年間もの保存が義務付けられています。今のところ、この40年間が最長でしょうか?四半世紀どころか半世紀近くの保存期間ですね。

こうなってくると、電子カルテや、電子的な健康診断管理システムを導入している場合は、もう永続的に保管するつもりで、取り組む方が良さそうとしか思えませんね。